丸投三代吉



「姫路に生まれた丸投三代吉は、出征からシベリア抑留の4年間を除いて姫路を離れることなく、そこで描き続けて死んだ。

 47歳で院展に初出品して入選し特待にまでなったが、東京には足を向けず超過密的祝祭画を姫路から送り続けた。

出品作をたどると、生命を鎖のように繋いで画面を埋めていく無心さが、あらゆる生命の讃歌となっている・・・略」

これは1993年から96年まで、読売新聞日曜版で「名画再読」のタイトルで鉄斎から梅原龍三郎・速水御舟・佐伯祐三から棟方志功・香月泰男・横山操らの綺羅星の如き流れの中に入っていた丸投さんの紹介文の一節である。

やはりシベリア抑留の香月泰男はその地獄から生きのび、後半生をかけ、仲間への鎮魂を黒と褐色の静謐な沈黙で埋めた。

 しかし丸投さんは、猫も鳥も花も羅漢も女子供にいたるまでの森羅万象を、多彩で明るく沸きたつ命の轟きの祝祭画を生んだ。それは豊かな播州平野の生命讃歌となっている。


                     記 こちまさこ