金井寅之助

1911(明治44)〜1988(昭和63

 加古川出身。京都大学文学部国語国文科を卒業して天理図書館司書研究員となる。この経歴が没後モノをいう。

 ノートルダム清心女子大学、松蔭女子学院大学教授などを歴任し日本近世文学の研究にあたる。とくに西鶴研究の第一人者となった。

 とはいえ、ほとんどの人が、その実力を知らず、新聞にかかれている紹介をみて、へえと驚いたものだ。地味で控え目。でいて気さくな性格だった。

 お夏清十郎で知られる慶雲寺と道一本へだてた家。学者がよく立ち寄った古書の老舗白雲堂ともほんの近間といったぐあいで、何となく住まいのふんいきも近世文学に似合っていた。


 著書に『西鶴』『西播怪談実記』『西鶴置土産』等々がある。

 研究資料で購入されていた3万3千点の本は、死後、遺族から姫路市に寄贈され、姫路文学館に「金井文庫」として所蔵されている。入手困難な希覯本(きこうぼん)を多数ふくむ宝庫だ。

                      記 市川宏三