受賞者プロフィール
姫路文化賞
こちまさこ
 1925年(大正14)生まれ。40年以上も前から女性の社会的地位向上を念頭においた視点でラジオの台本や新聞連載の執筆を精力的にこなし、女性史研究家としてその地歩をきずいてきた。また「歴史を読む会」での活動をもとにした『主婦のおしゃべり決算』、「戦後地図を作る会」の仕事をまとめた『聞き書き−姫路の戦後史』が刊行されるにあたり、重要な役割を果たした。その一方で、昭和40年代後半より50年代半ばにかけて画廊「レンガ舎」を経営、地元の美術作家を支援し、若手を育てるよりどころとなったほか、美術館や文化センターの建設運動にも協力した。
 そうした幅広い活動のなかで、ライフワークとなる題材と出会う。1945年、終戦の年におこった惨劇の二つのケース、満州開拓農民と日本に強制連行された中国人を追う道程は、じつに長く果てしないものとなったが、ようやく本年、『一九四五年夏 はりま 相生事件を追う』という題で、二冊の本として出版された。それらは日本と中国の関係を原点に立ち返って考える上で欠くことのできない仕事であり、今日的な意義はきわめて大きいといえる。


西川昭五
 1927年(昭和2)生まれ。戦時中、少年飛行兵となる。終戦前に結核にかかり、その後10年余りの闘病生活を送るなかで、詩作に手をそめる。文学に志をいだきつつ、赤穂でみかん山を開拓して生活の礎とした。陶芸にも自分の境地を見出した西川氏の真骨頂は、日々の労働と芸術の見事な融合にあるといえよう。
 また「文学研究会青穂」グループを主宰、長年にわたって詩誌『青穂』を発行し、地域の文学活動を発展させた。
 著書に 『原水爆詩集』(1952年)、詩集『雲雀』(1987年)、詩集『敗北主義』(1997年)、朗読のための物語詩『玉藻の前』(2002年 近代文芸社)、『やきものの詩』(2008年 澪標刊)がある。



文化功労賞
生駒義夫
 1934年(昭和9)生まれ。龍野市職員を42年間勤務のうち、公害対策室長・総務課長・納税課長・企画財政課長・選挙管理委員会事務局長・経済部長を歴任。
 1992年(平成4)以降、龍野市立図書館長として6年間つとめ、郷土文学資料館「霞城館」理事、龍野史談会の会員となって、郷土の歴史、偉人の足跡や功績の調査と顕彰にたずさわり、郷土誌『ひやま』『けいろう山』を刊行。
 現在まで、「霞城館」副理事長・龍野史談会副会長・たつの市観光協会理事・龍野ふるさとガイド理事・たつの市龍野文化協会理事をつとめる。経験に裏打ちされた豊富な知識をわかりやすい言葉でつたえ、観光ガイドのよき指南役として活躍している。
 2009年(平成21)に百周年をむかえる龍野史談会より刊行予定の記念誌『史跡探訪100年』を編集中。


    まさのり
木山正規
 1925年(大正14)生まれ。昭和21年、短歌結社「関西アララギ」に入会、教師をつとめるかたわら、堅実な写実主義によるすぐれた短歌作品を発表。現在にいたるまで、『磯うつ浪』(昭和53)、『雲美しく』(平成元)、『花梨の季』(平成8)、『露たむる草』(平成14)、『白き葦むら』(平成20)といった歌集を出している。昭和36年には赤穂市で「とべら短歌会」を結成、同会を主宰して多くの後進を育成した。
 そのほか詩集『児らへ贈る歌』(昭和55)、歌曲集『みんな花だよ』(平成4)、エッセイ集『小さいけれども』などを刊行、児童教育にも貢献した。
 また、赤穂市教育長、赤穂市文化会館館長、赤穂市文化振興財団理事長、西播短歌祭実行委員長、兵庫県歌人クラブ監事をつとめるなど、ジャンルをこえて地域文化の振興に多大な功績がある。



黒川録朗賞
後藤克浩
 1974年(昭和49)生まれ。地元加西で産出する「長石(おさいし)」を素材として創作活動を展開、その発表の舞台はヨーロッパ諸国やオーストラリアなど、世界にまたがっている。
 近年の代表作として、「カウラ日本庭園」「ベリビューパーク」(いずれも豪州)のモニュメントがあげられる。
 障害者とのワークショップにも取り組み、新しい角度から障害者芸術の可能性に光を当てていることもすばらしい業績である。今後の活躍が大いに期待される才能である。

柴田昌子
 1964年(昭和39)生まれ。1995年より数々の展覧会で入選をかさねる。
「柴田さんの作品は余計なもののない純粋な世界です。これまでの創作の中でテーマとなった「らせん」や「ほぐれとむすぼれ」、「咲(しょう)−形あるもの幽(かそ)けきもの」などの連作では、ごくシンプルな背景は背景としてテーマを引き立て、近作で多用されるカッターナイフによる繊細な線描も見事に浮き立って美しく映えています。そこには人間が抱えている根源的な何かが現われ出ているように思われます」という推薦者の言葉である。


    いちぞう
松岡一三
 1970年(昭和45)生まれ。高校時代より演劇をはじめ、プロデュース・Fの客演などを経て、1994年、輝くシリウスのような劇団をつくろうと「天狼星計画」を旗揚げ。その演劇歴は20年になる。ミュージカルを取り入れた青春物語、科学の先端技術を題材にしたSF、近年には人間の内面を見つめる奥深い作風を見せるなど、幅広いジャンルに取り組んでいる。ほとんどの公演にオリジナルのシナリオを制作し、演出家として役者として精力的に活動するほか、播磨の各劇団が加盟する「はりま劇団協議会」の代表もつとめる。「映像都市2008」の合同公演は、地元播磨の演劇界が飛躍をとげた大きな事業であった。
作品に「フラワーズ」、「FUTAKO」、「NIRVANA」、「ショート」などがある。



       みずかみむら
水上村・川のほとりの美術館
 1999年5月1日、日本初のフォークアート美術館として開館。館長・岩田美樹さんと二人の妹さん、夫君の版画家・岩田健三郎氏の協力のもとに運営されている。建物は赤茶色の洋風納屋をイメージしたものである。暮らしのなかで生まれる民衆芸術の作品として、絵画・書・版画・ガラス・陶・木・布・彫刻などの展示をしている。一階にはミュージアムショップとカフェがあり、来館者はゆっくりくつろげる。
 また、食べ物の地産地消をめざす「食・地の座」の事務局も兼ねており、多岐にわたる文化・芸術活動の発信拠点となっている。

主な展覧会
 李朝時代の伝統風呂敷・ポシャギ展(韓国刺繍博物館所蔵)
 中国上海近郊・金山の農民画と代表作家・張新映氏の全作品展示
 ベトナム・ドンホー村の版画   岩田健三郎氏の版画
 浅田重子さんの「布の手あそび」展  山下ひろし氏の絵など